1-4『使い走り』

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「今度、この船をワシが造るのさ」 「えっ?」  シャインは船体をなぞる手を止めた。しかしこの小さな船からすぐに目を逸らすことができなかった。何故だかよくわからないけれど、とても気になる。海軍士官として船に乗る以上、そしてホープから教わったこともあって、シャインは設計図を読むことができた。 「王立海軍造船所で、しかもあなたがこの船を造るんですか?」 「ああ。そうだとも」 ホープは平然と答えた。けれどシャインの胸中には疑念が雲のように広がった。 これはアスラトルの街で一番の規模を誇る、王立海軍造船所でわざわざ造る船でないのは明らかだ。現に造船所では五つある船台が、すべて新造艦の建造のために使用されている。どれも大砲を大量に積載する、砲列甲板を備えた大型船ばかりだ。  シャインは肩をすくめて頭を振った。 「考えられません。どうしてわざわざ新造するんですか? これぐらいの小型船なら商船を買い上げた方が経費も安くつくはずですし、今までそうしてきたはずですよ」 「だろう? でもこれは海軍本部が正式に発注した船なんだ」 「なんですって?」 「理由がお前にわかるか? シャイン?」
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