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シャインはゆっくりと設計図から目を上げた。
頬にかかる華奢な金髪を無意識のうちに振り払い、エルシーアの海を思わせる青緑色の瞳で真っ向からホープを見据える。
生来持つ品のよい顔立ちのせいで、シャインは温厚な青年のように見られがちだが、ホープへ向ける眼差しは、それらの先入観を裏切る鋭利な刃物の煌めきそのものだった。
「ふん。その様子じゃわかったようだな」
ホープが目を細める。シャインは静かにうなずいた。
「彼女は誰よりも速く走ることを使命に造られる船だ。違いますか。ホープさん?」
老船匠頭はシャインの言葉に口元をゆがめただけだった。
けれどシャインはホープのその笑みで、彼の試験に受かったことを察した。
「そうだ。彼女は誰よりも速く走れるよう設計された。『使い走り』の中で一番速い船になるのはワシが保証する」
「使い走り……?」
聞き慣れない言葉が出てきたのでシャインはホープに問い返した。
するとホープの落ち窪んだ水色の瞳が「えっ?」といわんばかりに見開く。
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