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「なんじゃお前。海軍に六年もいて『使い走り』の船を知らんのか?」
「えっ、あ、その……!」
シャインはうわずった声をあげて頭をかいた。
「六年といっても二年間は士官学校ですごしましたし、その後すぐにエルシーア領海の南端へ飛ばされましたから、まだ海軍の組織がよくわかっていないんです……」
「はっ! そんなもの学校なんぞで教えるわけなかろうが」
「えっ?」
シャインはますます面喰らった。ただぽかんと口を空けたまま、両手で腹を抱えて笑うホープを見つめるしかない。
「『使い走り』を知らんとはな……はははっ……」
目の端に涙を浮かべてホープはまだ笑っている。流石にシャインはむっとなった。自分がどんなにがんばっても、三十年船を作り続けたホープに知識でかなうわけがない。それが不意にとても悔しく思えて、シャインは膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめた。
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