1-1 白昼夢

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「船が見えるぞ!」  メインマストの檣楼(トップ)で見張りについていた水兵が叫んだ。  シャインは見張りの声に誘われるように左舷舷側に駆け寄り、夕焼けに帆を赤く染める三本マストの船影を見た。  ここはまだエルシーアの領海だ。帆装も見たところありふれたブリッグ船だが、シャインは何故か胸騒ぎを覚えた。  後方から近づいてくる船は、こちらに向かってくるようだ。  いや、アイル号に追いつこうとしていた。  遠雷の響きと共にかの船から白い煙がぱっと上がるのが見えた。  同時に、アイル号の後方に伸びる白い航跡を穿って水柱が上がった。 「砲撃!?」  シャインは咄嗟に踵を返し、ヘルム副長がいる後部甲板へと駆けた。
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