1-7 命名式

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 そもそもジャーヴィスが新造船を訪れたのは、勿論命名式のための下見もあったが、もっと肝心なこと――この船を隅から隅まで検分し、建造指揮をとったホープ船匠頭に直接会って、船の能力や特色を事細かく聞き出そうと思ったのである。  なにしろこの新造船へ副長として乗ることを打診されたのは、一週間前という急なものであった。もっとも、海軍の命令は機密保持のために、何時も直前になって伝えられるので仕方ない。副長となったジャーヴィスは、誰よりも船の事を知り、把握する必要があった。  艦長は船の中で起こることすべてにおいて責任をもたねばならないが、様々な実務をこなすのは副長なのである。  恐らく自分と同じように、急に艦長となったグラヴェール参謀司令官の息子は、いろいろ曰くありげな噂で有名な人物だ。年も若い上に艦長という肩書きを背負えるのか、その実力は未知数のため、いざという時、頼りになるのは己の得た知識しかない。  よってジャーヴィスは新造船を訪ねた。  それなのに。  なんということだろう。
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