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慌てて後ろを振り返ると、そこにはほっそりとした体躯の少年が立っている。
後ろの裾が膝まで垂れた水色の上着に、薄いクリーム色のズボン、磨き込まれた黒革のブーツをはいている。くるりと渦を巻いた金髪を揺らし、まだ海上の強い陽の洗礼を受けていないのだろう――磁器のような白い肌が眩しい。
少年士官は長い睫毛をしばたきながら、小首を傾げてジャーヴィスの顔を見上げた。
「どうしたんですか? お化けでも見たような顔をしていらっしゃいますけど」
「あっ……ああ、お前か。クラウス士官候補生」
ジャーヴィスはほっと息をついた。クラウスはジャーヴィスの前まで歩いてくると、白い手袋をはめた右手を額に軽く当てて敬礼した。士官学校の教官が褒め讃えるくらい見事なお手本通りの敬礼だ。
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