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こういう時シャインはあの父親の存在を――参謀司令官の息子だという重圧を感じずにはいられなかった。そして自分の一挙一動が、彼等を通じて父親の評価へとつながっていくのを痛烈に意識した。
幸いなのは父アドビスがやはりここに来ていないことだ。
軍艦のメインマストを思わせる恐ろしい長身。切り立った崖のような重厚な面立ち。人の底意までを見通すような鋭い青灰色の瞳をしたそれがないだけで心底ほっとする。
シャインは気持ちを切り替えて、来賓達の方へ近付いた。
命名式への参列の礼を簡単に述べて、深々と頭を下げる。
そして、赤い絨毯が敷かれた渡り板の方へ足を進めた。
通路には白い礼服をまとった二十名の儀仗兵が両脇へ並び、シャインがその前に立つと、雲一つない蒼空に向かい一斉に空砲を放った。
硝煙の白煙が舞う中で、赤や黄色。青に緑。新造船のマストの間の静索に付けられた、色とりどりの小旗が誇らしげに海風を受けて翻るのが見える。
シャインは神官を伴い新造船へと乗り込んだ。
左舷舷側では神妙な顔でこちらを見つめる副長ジャーヴィスと、十五名の乗組員が微動だにせずきちんと一列に整列している。
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