エピローグ

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「赤ちゃんって、見てて飽きないねえ」  ベビーベッドを覗き込んでいる楓は、小雪の赤ちゃんに自分の指を握らせながら張り付くように見ている。 「ひい君、起きてる?」  小百合もやって来て覗くと、タオル地で出来た振ると鈴の音がするオモチャを鳴らして「ひい君」と呼んでニコニコとしている。  聖バレンタインデーに生まれた小雪の息子は、両親が付き合いだした日に誕生日となったこの日に因んで、「(ひじり)」と名付けられた。今は片山の家のリビングに置かれたベビーベッドの中にいる。   「小百合、いつまでも見ていたら遅刻しちゃうぞ」 「楓! 今すぐそこを離れないと置いて行くからな!」  女子二人はなかなかベビーベッドから離れず、毎朝のようにマイケルと史也にそれぞれ引っ張られるように連れて行かれる。  バタバタと子どもたちが出て行くと、ケンちゃんがゆっくり階段を降りてきて「行って来ます」と私の肩に手を乗せた。 「行ってらっしゃい」  私もお返しのように背中をポンポンと軽く叩いて、ケンちゃんの車が見えなくなるまで見送る。  少し前までは、ただ声だけかけてドアを閉めていた。何気ないことだけど、ほんの少しの変化が心の距離を縮めているような気がする。     「あっ、あっきがまた幸せ顔になってる」  玄関のドアを閉めると、パジャマ姿で現れた小雪がニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだ。そして、そのままリビングの聖の元へ行くと「ひじりぃ、おはよう」と猫なで声を出して笑いかけている。  今日も幸せな一日が始まった。 【了】
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