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綺羅星さんの知ってること
「綺羅星さん、まずまず団のこと知ってるの?!」
「うわさレベルだけどね。美味しいレストランにまずまずオーラ?を振りまいて、美味しいご飯を作れなくしてしまうっていう……。まるでおとぎ話の悪役よね……。でも、実際に光が丘のレストラン街はなくなってしまった……。」
わたしはお父さんとお母さんのほうを見た。ふたりとも、しょんぼりしながらうんうんと頷いていた。
「あ、あのね、綺羅星さん……。実はね、さっきまずまず団がうちに来たの。それで、お父さんがさわったりした食材はまずくなっちゃって、ラーメン作ったりできなくなっちゃったの……。」
「えっ?!本当に???おとぎ話じゃなくて?」
綺羅星さんはびっくりしている。それもそうだ、そもそも『まずまず団』って名前からしてへんちくりんだし、料理をまずくするなんて、確かにおとぎ話の悪役みたいだ。
「あの、えっと、わたしもおとぎ話みたいだなっておもうんですけど、でも、でも、本当で……。」
「ちいかちゃんごめんね、疑ってるわけじゃなくて、私も実際にまずまず団に会ったっていう話を聞くのが初めてで、ちょっとびっくりしちゃったの。その話、詳しく聞かせてくれる?」
そう言って綺羅星さんは手帳とペンを取り出した。
「はい!!上手に話せるかわからないけど……!」
わたしは、お父さんとお母さんと一緒に、今日の出来事を話した。
綺羅星さんと別れたあと、コロッケが売ってなかったこと。
お父さんも、二人組の変な帽子のお客さんがお店に来たこと、まずはラーメンを注文して、食べてから「なんだこのうまいラーメンは!!」と怒鳴って、それからお店のなかで変な踊りを始めたことを教えてくれた。
わたしがお店に着いてから、まずまず団がいなくなるまでのこと。
お母さんも、お父さんが汲んでくれたお水がすごくまずかったことなんかを話した……。
実家にお父さんにお水を汲んでもらって、綺羅星さんに出してみたんだけど……。
「綺羅星さん、これお父さんが汲んだお水……なんだけど、さっき気づかなかったけど、なんかめちゃくちゃ臭いかも……。」
コップを綺羅星さんの前に置きながらそう言うと。
「うん……。これはちょっと、『まずそう』ね……。飲んだらお腹を壊しそうな匂いがするわ……。さっきお母さんが汲んでくれたお水と全然違うわね……。」
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