少女は街へ降り立って

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 サラサのおばあちゃまは、サラサの生まれ育った村でたったひとりっきりの魔女です。  遠い国や街のお話をサラサたち村の子どもにいっぱい聞かせてくれて、病気やけがをした人が訪ねてくると特製の薬草のお薬で治してあげて、村を『混沌』と呼ばれる悪い魔物が襲った時には魔法の力でかっこよく退治してくれる。村のみんなに愛されしたわれている、立派な魔女のおばあちゃま。  そんなおばあちゃまにあこがれて、サラサは魔女になりたいと思うようになったのです。  サラサは小さな頃から、田舎で手に入るだけの本を片っ端から読んで国の歴史や各地に伝わる古い物語を学んだり、おばあちゃまに薬草の扱いを教えてもらったり、本を片手に魔法の勉強をしたりしてきました。  でも、魔女になるためには、たくさんの物語を知っていて、薬草を煎じることができて、魔法が使えるだけではだめなのです。  この国で魔女と認められるには、ここ『月の街』で、魔女になるための試験を受けて合格しなくてはいけないことに決まっていました。初級・中級・上級の試験があって、そもそも初級魔女試験を通っていなければ、どんなに優れた才能があっても魔女を名乗ることはできないのです。ちなみにサラサのおばあちゃまは上級魔女で、だからサラサの目標も、当然上級魔女になることなのでした。  そういうわけで、サラサは勉強をがんばるだけではなく、自分の力で『月の街』に行けるように、自分の家や、村の他の家の掃除や畑仕事を一生懸命に手伝って、もらったお駄賃をこつこつとためてきたのです。街へ行くには、それなりのお金が必要だったのでした。
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