□ 「真夏の真昼の夢。」

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 目が覚めたら、何もかも変わってしまった───なんてことはなくて、瞼の裏でちらついていた夕暮れの色が、今度はしっかりと目に焼き付いた。  赤みを含んだ西陽。差し込む窓から吹く生温い風。どこか殺風景にも見える、わたしの部屋。遠い世界から聴こえるような、この町の生活音。  ぼんやりとした頭で、気だるさの残る身体を起こす。小さくベッドが軋む。夕焼けが目に染みる。網戸越しに見えた風景は、なんだか郷愁的。綺麗なようで、現実味のない、どこかふわふわした感じ。いつもの、何ら変わらない、わたしの住んでる町の景色に、懐かしさすら覚えるのが、なんだかおかしな気持ち。とは言えど、世間は、そしてわたしも、夏休みという期間なので、そんな気がしてるだけなのかも。中学生最後の夏休みなのに、こんな時間までだらだら寝てるわたしは、お察しの通り友達が少ない。先生に提示された宿題はぜーんぶ終わってるけど、特にこれといった予定もないので、毎日を自堕落に過ごしている。     
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