606人が本棚に入れています
本棚に追加
/292ページ
今まで大勢といたからだろうか、いつもならば何も思うことのない夜道を、酷く静かに感じる。足どりが重い。歩き慣れた道なのに、いつもより遠い気がする。煩いお喋りに延々と附き合わされて、疲れたのだろう。全く、うんざりする。
自然と、溜息がこぼれ出る。すると、ふふ、と、女の声で、微かに笑うのが聞こえた。柊は即座に振り返った。すぐ背後に、同じ学校の制服を着た少女が立っていた。
柊は眉をひそめる……油断した、本当に今日の自分はおかしい。やはり気の進まない集まりになど、出るんじゃなかった。
「君が柊?」
問われて、柊は答えない。少女は間を詰め、柊の顔を覗き込んだ。柊が軽く睨んで見せても、少しも怯まない。
「本当に邪眼持ちなんだ。すごいね」
笑みを泛かべて、少女は云った。緩く波打った長い髪が、いかにもやわらかく風になびいた。
柊は眉間を皺めた。
「何だ、お前。俺に何の用だ」
「君を見張りにきたの」
少女は無邪気に手を振った。「よろしくね、柊」
最初のコメントを投稿しよう!