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 ずっと読みたかった古いファンタジー小説だ。もう絶版になっているから書店で購入することが出来ず、以前住んでいた市の図書館にも置いていなかった。その本が、此処(ここ)の図書館にあったのだ。  機械で検索をして、タイトルが出てきた時には愕いた。この本の存在を識って、一年以上が経つ。まさか此処で巡り逢えるとは思わなかった。ただちに借りようとしたが、貸し出し中だったので、予約を頼んだのだった。  秋鹿は胸を高鳴らせながら表紙を見つめた。とても美しい本だ。重厚な魔法書のような。あまり識られていない本だけれど、自分よりも先に借りていた人がいた……その人、どんな人なんだろう。ちょっぴり気になった。  ちらちらと、ページをめくりながら玄関へ向かう。 「秋鹿、」  銀河が耳元で囁いた。 「え?」
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