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 秋鹿が顔を上げると、硝子(ガラス)越しに制服姿の柊が外からこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。その隣りには同じく高校の制服を着た少女がいる。柊に何か話しかけている様子だ。長い髪を垂らして、笑った顔がぱっと目を引く。可愛い人だなと、秋鹿は思った。  柊が図書館に入ってくる。秋鹿に気附いて、うろたえたような表情になった。珍しい表情だ。 「あ、こんにちは……」  秋鹿は頭を下げた。すると柊は少女の腕を掴んで、引き返していった。なあに、どうしたの、と、少女が云うのを、耳も貸さずにずんずんと歩いていく。秋鹿と銀河は顔を見合わせた。 「見ちゃいけないものをみたのかな、もしかして」  さあ、と、銀河は鼻を鳴らして、「あいつはやっぱり苦手だな、俺は」  銀河は邪眼持ちの柊に、恐怖意識があった。もう以前のように攻撃したりはしないが、まだ打ち解けがたい存在らしい。
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