606人が本棚に入れています
本棚に追加
/292ページ
朝、教室に入るなり、久坂に泣きつかれた。
「アキ、数学のプリントやってきたか?」
「うん、一応」
秋鹿が頷くと、久坂は手を合わせて拝むような恰好をして、
「悪いけど、最後の問題だけ見せてくれないか? 誰に聞いても判らないって、そこだけやってないんだよ」
久坂の机のまわりには数人が固まっていて、きまり悪そうにこちらを見ていた。
秋鹿は手こずった最後の問題を憶い出しながら、鞄を下ろした。
「僕も自信ないから、間違っているかも識れないけど……、それでも良い?」
久坂はかぶりを振った。
「良いも何も、大助かりだよ」
白い歯を見せて笑った。秋鹿がプリントを取り出すと、皆はわっと集まってきて、答えを写した。
最初のコメントを投稿しよう!