3

8/17
前へ
/292ページ
次へ
「モンブラン……かなあ。秋だし」 「そうね。季節感のあるものが良いですね」  ハルもケーキを口に運び、頷く。 「秋の食べ物って、何だろう。葡萄(ぶどう)とか、南瓜(かぼちゃ)とか、梨とかかな」 「私は薩摩芋(さつまいも)も良いと思うの。女の人がきっと喜びます」 「うん、薩摩芋も面白そうだね」  二人はあれこれと相談をする。やがて閉店の時間となり、助六と茶漬けがパトロールから戻ってきた。  次の日も秋鹿が学校から帰ってくると、店にはあやかしの客はおらず、人間のお客さんが一組いるだけだった。  別に麗ら彦たちがこの店にやって来るのは助六たちのパトロールとは違って日課ではないが、いつも彼らが店にいるのが当たり前のような感じだったので、何となく淋しい。しかしあやかしは気まぐれなものだと、前に清明行者が云っていたし、彼らのそうしたところを秋鹿は好きだった。  来たい時に来て、食べたいものを食べる。自分の思うままにふるまう彼らが秋鹿は好きなのだ。だから彼らと一緒にいると、心がくつろぐのだろう。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

607人が本棚に入れています
本棚に追加