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「モンブラン……かなあ。秋だし」
「そうね。季節感のあるものが良いですね」
ハルもケーキを口に運び、頷く。
「秋の食べ物って、何だろう。葡萄とか、南瓜とか、梨とかかな」
「私は薩摩芋も良いと思うの。女の人がきっと喜びます」
「うん、薩摩芋も面白そうだね」
二人はあれこれと相談をする。やがて閉店の時間となり、助六と茶漬けがパトロールから戻ってきた。
次の日も秋鹿が学校から帰ってくると、店にはあやかしの客はおらず、人間のお客さんが一組いるだけだった。
別に麗ら彦たちがこの店にやって来るのは助六たちのパトロールとは違って日課ではないが、いつも彼らが店にいるのが当たり前のような感じだったので、何となく淋しい。しかしあやかしは気まぐれなものだと、前に清明行者が云っていたし、彼らのそうしたところを秋鹿は好きだった。
来たい時に来て、食べたいものを食べる。自分の思うままにふるまう彼らが秋鹿は好きなのだ。だから彼らと一緒にいると、心がくつろぐのだろう。
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