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「実は母さんが風邪をひいてさ。今、家で寝てるんだ」  久坂が事情を説明する。 「まあ、それは大変ね」  心配するハルに、久坂は頸を横に振って、 「大したことないんです。父さんが何か食べたいものはあるかって訊ねたら、ケーキが食べたいって云って。食慾あるんだ。食い意地が張ってるからさ、うちの母さん」  冗談っぽく云う。父親が笑いながら久坂の両肩に手を置いた。 「前にこちらでいただいたケーキが、とても気に入っていた様子だったので、こちらに伺ったんです」 「それで、わざわざいらして下さったんですね」 「突然のことでご無理を云ってすみません」  すみませんと、久坂も父親に倣って恐縮する。 「とんでもない。うちのケーキを気に入って下さって嬉しいわ。どうもありがとうございます」
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