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 ずっと(ねむ)っていた籠枕が目を覚ました。 「何か召しあがります?」  ハルが訊ねると、籠枕は頷き、メニュー表の珈琲(コーヒー)の文字を指差した。 「珈琲ですね」  ただちにハルは珈琲を淹れはじめる。秋鹿はカップの用意をした。 「久坂君は、兄弟がいるの?」 「弟がいるって云ってた。小学二年生の。それから犬と」  ハルは笑った。 「そう。にぎやかそうで良いわね」  弟とはしょっちゅう喧嘩(けんか)をすると久坂は云っていたが、兄弟のいない秋鹿には羨ましい。 「お母さんの風邪が早く治ると良いですね」  出来上がった珈琲を籠枕に出すと、彼は背を丸めて香りを嗅ぎ、それからカップを持ち上げ、飲みだした。ドアベルが鳴り、新しいお客さんが入ってきた。
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