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夜、秋鹿は図書館で借りてきたファンタジー小説を開いた。せっかく予約までして借りた本なのに、まだちっとも読めていない。昨夜も店の手伝いに疲れて、本を開くことが出来なかった。今日は昨日よりも元気だし、たくさん読めそうだ。
期待以上に面白く、のめり込んで読んでいると、識らぬ間に遅い時間になっていた。時計を見て、秋鹿は焦った。明日からまた学校だ。遅刻しないように、早く睡らないと。銀河は先に寝床で丸まって寝ていた。やわらかな毛並みの背中が、規則正しく上下に動いている。秋鹿は名残惜しく本に栞を挟んで閉じた。
こう云う時、思うのだ。学校なんか行かずに、いつまでも本の世界に浸っていたい。けれどもそんな願いを、銀河に叶えてもらうことは出来ない。
本の世界は面白いけれど、自分はこの世界を生きているのだ。自分が生きているのはこの世界なのだ。苦手なこと厭なことがいっぱいある、この世界なのだ。そしてこの世界でしか出逢えないことも、いっぱい、ある。
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