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智典の濡れた目が、驚いたように見開かれた。
その傷ついた頬に、手を伸ばして、
「腫れてアザだらけの顔だって、カッコいい」
「貫一さん……」
「俺にとっちゃ、お前がチャンピオンだ」
こいつを励ましたい。
そのためなら何でもしてやりたい。
頭の中に、手を握っただけで喜んでくれた智典の笑顔が浮かんだ。
それなら……
ゆっくり、顔を寄せた。
息がかかるほど唇を近づけていく。
けれど唇が重なる寸前、フイッと顔を背けられた。
胸が、ズキンと痛んだ。
それを隠して、自嘲ぎみに笑う。
「……悪い、やっぱり嫌だよな、こんなおっさんとなんて……」
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