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「違います!」
叫んで、智典がこちらを向いた。
けれど目が合うと、苦しそうにまぶたを伏せて、また俯いてしまう。
「……すみません、でも俺には、あなたのキスをもらう資格は無いから……」
「なんだよ、資格って……キスくらい、別にいいだろ」
「ダメです……今それをもらったら、俺は先に行けなくなる」
智典の手が、そっと俺の左手を取った。
「智典……」
「貫一さん、俺、もっと強くなる。もっともっと強くなる。もう二度と負けないから……」
大きな両手で俺の左手を包みこみ、祈るように握りしめる。
「だから……柳瀬さんを倒して、日本で一番になったら、キスをください」
目頭が熱くなった。
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