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「……そして、……世界で一番になったら、あなたをください……」
心がふるえる。体がふるえる。
ずっと正視を避けていたものが膨れ上がって噴き出してくる。
ああ、俺、お前が、好きだ……。
「やるよ……」
涙が、溢れ出す。
「約束する。お前が世界一になったら、俺を全部お前にやる。だから……」
言葉なんて見えないものがお前の力になるんだろうか。
こんな約束で、お前の勇気を奮い立たせることができるのか。
「頑張れ、智典……」
なんで俺はこんなに無力なんだろう。
こいつの背中をただ抱いてやることしかできない。
遠く、潮が引いていくような群衆の足音を聞きながら、凍える背中に体温を与える。
長い時間、俺たちはそうして寄り添っていた。
【続】
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