柳瀬戦

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最期の一瞬まで勝ちを諦めない。 あいつは、ボクサーだ。 本物のボクサーだ。 ……なら、俺がそれを中断させるなんて、できない。 何もしてやれなくても、せめて心はあいつと一緒に戦っていたい。 信じる。 この会場にいる誰もがお前の負けを確信していても、俺だけはお前の勝利を、最後まで信じる! 「頑張れ智典! 智典ーー!」 声を張り上げると、 「ウゥゥーーー!」 低い唸りがリング上に響いた。 智典がマウスピースを喰いしばり、獣のように唸って突進していく。 体力は全て出し尽くしているはずなのに、それが無くなっても精神力で戦い抜こうとしている。 傷だらけの顔を汗まみれにして、前のめりに、がむしゃらに拳を振るう姿に、胸を突かれた。 ……ごめん、ごめん智典。

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