File1 娘さんを俺に下さい

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「本田刑事を撃ったな!」 「違う……だって、こいつが……」 引き金を引いてしまった犯人は、殺人の罪を犯した恐怖のあまり、拳銃を捨て去り叫び声を上げた。 「うおおおおおお!!!」 目を血走らせ、常識ではありえない行動に出る。 「くそおおおおお!!!」 窓ガラスを体当たりで破壊し、ガラスが刺さった血まみれの身体をものともせず、ベランダの手すりに足をかけた──自殺する気だ。 それを止めるべく、東は犯人の腰を掴んだ。しかし、既に身体半分落下していた犯人の重さに耐えきれず、踏ん張る力の甲斐ももなく東の身体もベランダの外へ──空中へ放り出された。 (やばいっ、落ちる!!) はるか八階下のコンクリートに叩きつけられる自分の姿が目に浮かぶ。それでも犯人から手を離さない東の視界が真っ赤になる。 「東ああああ! 掴まれ!!」 上からの声援に東は目の前の赤に必死にしがみついた。 「おおおおお!!!」 ──身体がブラブラと浮いている 「止まった……」 両肩の関節にとんでもない痛みと、赤い紐を掴んだ掌が摩擦による火傷で痛い。 だがその痛みは自身が生きている証拠。 ホッと一息つき、下を見ると腰を掴まれぶら下がる犯人、上を見ると赤い紐を掴む血管が浮き出た手と、紐を投げてくれた本田がいた。 本田はよくやったと微笑んでいた。その笑顔は撃たれた事を感じさせない。 何故なら、あれはダミーの拳銃だからだ。 本物は背中に隠してある。     
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