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挙式が終わり、お色直しの為新郎新婦はメイクルームへ退散した。カラードレスに着替える奈々と違い、タキシードのままの東は髪形だけ整えて、別室の椅子にドカッと座った。
気の抜けた東の元へはやはり本田が現れた。
「……」
「……」
お互いに何も言わない。
気まずい空気を一緒に吸いながら、気に留めている事は別の事。
本田はチャックが全開だった羞恥心と、孫の話だと思っていた勘違いに恥ずかしくなり、そしてもちろん東の股の息子も心配だった。
東はあの赤い紐の正体を問うか否かと、チャックで自身の息子を挟んでしまった痛みに未だに耐えていた。
二人とも口を開かない。「阿吽の呼吸バディ」もプライベートではからっきし役に立たなかった。所詮今は「義理の父親と息子」なのだ。
気まずい沈黙を裂くようにメイクルームの扉がノックされる。
もうそろそろ新婦のお色直しが終わるとスタッフが伝える。それを皮切りに最初に口を開いたのは東だった。
「すまないっす。色……あんな汚い色になって。見たっすよね?」
チャックに挟まった時、東は下着を履いていたので挟まった息子は見ていない。だが、東の息子がうっ血でもして変色してしまったと本田は身震いしてしまった。
「綺麗な真っ赤だったのに…」
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