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「すまないっす。色……あんな汚い色になって。見たっすよね?」
勝負褌に臙脂色などを当ててしまった事を謝罪する東。大切な日の褌と思えばあの真っ赤な布はとても綺麗に思えてきた。
しかしそれにくすんだ色を足してしまったのは自分だ。
「綺麗な真っ赤だったのに……」
「気にすんな。そ、その、大したこともなかったからいいじゃねえか! 命があるだけましだ!」
あの事件の日、本田は東を犯人の前で激しく叱責した。しかし、今は真逆の事を言っている。
もしや、大切な日に東の気分を害さぬようにと本田なりの気遣いなのかもしれない。
いつもは強気で頑固な本田のしおらしさに驚いていると、更に驚きの言葉を放った。
「俺の方こそ悪かったな」
「え?」
本田が謝ったのだ。
「身体、大丈夫か?」
更に体の心配までしてきた。
これはどういう事だろうと東は考えた。
「……」
「俺はもう使わねえが、お前はまだ使うだろ?」
「使う」「使わない」とは褌の事かとも考えたが、「身体、大丈夫か?」と言われ股のあたりに寒気が走った。
まさか…
(何か感染症にかかっているのか)
と東は掌を擦った。
だが、感染症ならこんなことでは取れないし、あの褌に触れたのはもうだいぶ前だ。下手すると既に発症している。
褌か感染症かどちらの事を言っているのか真意を探った。
「使わないっすよ。でも、結婚式終わったら病院に行きます」
性病は何科だと考えていると、本田が唖然とした顔をする。
「お前まさか……」
その表情が後者の「感染症」であったことを物語っていた。
東は地面が崩れる音がした。
だが、まだ希望はある。感染していない可能性もあるし、治る病気かもしれない。
「いや、まだっすよ!とりあえず検査をするっす」
本田がソワソワし、重たく口を開いた。
「俺が良いところ紹介してやる。そこにしろ」
本田行きつけの性病科があるのだろうか。
相棒と同じところに通うのは気が引けるが背に腹は代えられない。
「本田刑……いえ、お義父さんもそこで?」
「ああ。手術だったがな」
これはかなり重たい病気を移されたのかもしれない。
手術をするほどの性病と聞けば、おのずと自身の股の息子の今後が気になる。
まさか永遠の別れになったりはしないだろうかと、東は更に本田に尋ねた。
「手術したんすか?」
「ああ。あの日の事は忘れねえ……俺が切ったんだ」
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