File3巨塔を撃ち抜け

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 披露宴が始まってしばらくすると、新郎新婦の元へ参列者が集まりだした。お酌をしてもらったり、奈々の花嫁姿を見て涙を流すもの、東に家族とは何か語るもの様々だ。 「奈々、写真撮ろう!」 奈々の友人がカメラを向けてくる。 「僕も!」 と奈々の友人の息子が声を上げておねだりをする。 「あいだにどうぞ」 と、東と奈々の間を奈々が勧め、その子は二人の間に納まった。何回かシャッターが下りた後、東の腰丈くらいの少年はテーブルの生花をいじったりとはしゃぎ、それを微笑みながら眺めていたのだが…… 「そういえば、奈々仕事はどうするの?」 友人が奈々の今後の事を聞き始め、奈々が答えていく。 東もそれを眺めていた。そしてその一瞬の隙をついて小さな窃盗事件が発生したのが。 「ん?」 腰のあたりがむず痒い。見下ろすとあの少年がいた。 「?!」 その手には拳銃が握られていた。 それは東がお守りとしてポケットに忍ばせていた空気砲の拳銃で、今回の結婚式後半の重要なアイテムだ。 それを一瞬の隙を突かれ少年に奪われてしまった。 あの拳銃は本物ではないにしろ、この結婚式には欠かせない物。東は取り上げようとしたが、少年はすばしっこく逃げて行った。 追いかけるために席を離れようと動けば 「そろそろキャンドルサービスの準備を」 とスタッフに強制退場を食らってしまう。 ──ここまで話、東は本田の鉄槌を覚悟した。 「オモチャだよな?」 東は顔を上げない。 「本物っす」 あれは偽物だ。だがそういえば、本田は奪還作戦に協力してくれないだろうと思って嘘をついた。何に使うのか言えないのも理由の一つだ。 顔を見られれば嘘だとバレる。だから頭を下げ続けた。 「この青二才ッ、 始末書もんだぞッ」 怒気を含め、場には留意して静かに叱りつける本田。 「次はキャンドルサービスです」 東の「キャンドルサービス」という言葉にみなまで言わずとも本田は理解した。 「くっそ。連帯責任だ。何とか騒ぎを起こさずに暗闇の中で回収してやる!」 「ありがとうございます!!」 「どのガキだ」 「赤い蝶ネクタイをつけています。子どもは一人しかいないのですぐにわかるっす!」 「分かった。お前はなるべくキャンドルサービスで時間を稼げ」 「了解っす!」 敬礼をし、再び「義理の父と息子」の作戦が始まった。
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