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位置的に新郎東の職場の席だ。つまり本田の仕事仲間たちの席でもある。多少の粗相も許されるかと、本田も気づかれぬようにテーブルクロスの動きを最小限にして中に潜り込んだ。
(うおおおおおお! くっっっさっっっ!!!!!!!)
中はとんでもない悪臭だった。
目が染み、呼吸が苦しい。毒と毒が化学反応を起こしたような臭いは生きながらの死を味合わせる。
職業柄、危険を排除しようと反射的に臭いの元を探した。
スマートフォンのライトで中を照らす。目の前には匂いの元凶が今も悪臭を放っていた。
(何でこんなところで靴下脱いでんだ!)
しかもこの派手なセンスの欠片もない靴下は見た事がある。科学捜査研究所の山下だ。東と同年代で仲が良く仕事でも世話になる事が多い。
(科捜研め、とんでもない物開発しやがって……)
否、体臭である。
むず痒くなったのか、テーブルの下は人から見えないのを良い事に靴下を脱いでいる山下。本人は解放感に満たされているだろうが、本田はとんでもない拷問に当初の目的を忘れかけていた。
臭いが染みて開く事のできない目。必死に片目だけ開くと暗闇で動く何か小さな塊。
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