File1 娘さんを俺に下さい

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仕事の合間を縫って猛アタックして落とした知美とは「帰りが遅い」「今日も休日出勤なの?」と同じ喧嘩を繰り返す日々。 しかしここでも狙った獲物を離さぬ男の力量を発揮し、離婚すれすれの水面下の中娘の奈々が誕生した。 「娘だけは悲しませちゃいけねえ……そう思っていたんだけどな。上手くいかねえもんよ」 結局本田が陽の明るいうちに家にいる事はほとんどなく、学校行事にすらろくに参加できないまま、娘の奈々は今年で24歳を迎えた。 「娘にもなあ、色々言われたな」 それでも本田の瞳は憂れる事も遠くを見る事はなく、こんな時でもマンションを監視している。 「俺が奈々に言えることは一つだけだ。きちんと家に帰ってくる男と結婚することだな」 東の口が開く。 「何だ東、もうその事で喧嘩しちまったのか?」 ガハハと笑う本田に、東は冷や汗が流れた。 「……本田刑事」 「ん?」 「……」 「何だ」 「もし……もしですよ。娘さんが帰宅時間の遅い男性と結婚したらどうします?」 「ぶん殴るだろうな」 躊躇いもなく言ってのけた本田に、運転席の東の身体が跳ねる。 「どっちを?!」 「男に決まってんだろ」 心外だと言わんばかりの声を上げる本田。 東はその横で心臓をバクバクさせていた。 「そ、そうすっか」 「それよりお前、食わねえのか?」     
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