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仕事の合間を縫って猛アタックして落とした知美とは「帰りが遅い」「今日も休日出勤なの?」と同じ喧嘩を繰り返す日々。
しかしここでも狙った獲物を離さぬ男の力量を発揮し、離婚すれすれの水面下の中娘の奈々が誕生した。
「娘だけは悲しませちゃいけねえ……そう思っていたんだけどな。上手くいかねえもんよ」
結局本田が陽の明るいうちに家にいる事はほとんどなく、学校行事にすらろくに参加できないまま、娘の奈々は今年で24歳を迎えた。
「娘にもなあ、色々言われたな」
それでも本田の瞳は憂れる事も遠くを見る事はなく、こんな時でもマンションを監視している。
「俺が奈々に言えることは一つだけだ。きちんと家に帰ってくる男と結婚することだな」
東の口が開く。
「何だ東、もうその事で喧嘩しちまったのか?」
ガハハと笑う本田に、東は冷や汗が流れた。
「……本田刑事」
「ん?」
「……」
「何だ」
「もし……もしですよ。娘さんが帰宅時間の遅い男性と結婚したらどうします?」
「ぶん殴るだろうな」
躊躇いもなく言ってのけた本田に、運転席の東の身体が跳ねる。
「どっちを?!」
「男に決まってんだろ」
心外だと言わんばかりの声を上げる本田。
東はその横で心臓をバクバクさせていた。
「そ、そうすっか」
「それよりお前、食わねえのか?」
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