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──ドサッ
──ガチャンッ
床では……本田が子どもを抱き締めていた。
「怪我はねえか? クソガキ」
反射的に助けたのは子どもの方……そして拳銃は床に静かに伏せっていた。
(ふううう、よかった)
これをダミーの空気砲だと知らない本田。しかしそれでも本田が助けたのは子どもの方だった。
その子どもは恩を仇で返す用に腕の中でジタバタと暴れる。
「おい、じっとしてろ!」
忙しなく動く頭は手元を離れた拳銃を探している。そしてそれを見つけて一層激しく、腕の中で暴れまわった。
このままでは埒が明かない。
腕を離して拳銃を取りに行けば、確実にすばしっこい子供に負けてしまう。しかし、このまま確保していても。拳銃を取りに行くことは出来ない。
その間にも小さな怪獣は腕の中で解き放たれる為に戦っている。
向けだすことに必死になっている子どもの意識が逸れているのを確認して本田はズボンの中に手を突っ込んだ。手際よく手を動かし、今日の為の赤いあいつを解き放つ。
ズボンから取り出される赤い物体、それを縄を引っ張る様に片手で素早く股間から抜き取る。頑丈な布と股間が擦れてい激痛が走るが、なりふり構っていられなかった。
(もう使い物にならない俺の息子より、新しく家族になる息子の為なら俺は男が千切れてもいい)
奈々だけでなく、今回の窃盗事件の被害者に東を加える。
この極限状態で本田の東に対する思いの変化は徐々に変わってきていた。
(奈々の為、そして東の為にも取り返さにゃならん)
本田は漢をみせ、股間の摩擦に耐えた。
「ぐッ」
あまりの痛みに子どもを捕らえていた腕から力が抜ける、その隙を見逃さなかった子どもは、するりと本田から抜け出し拳銃まで駆けて行く。
その後ろで倒れ込んだままの本田が腕を振り上げる。腕に助走をつけ、そこから命の綱、もとい勝負下着、もとい赤い褌を拳銃に向けて飛ばした。
──そこだ!
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