File1 娘さんを俺に下さい

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二階の通路に到着した二人。本田が赤い紐を回収し、外から確認していた八階へ向かう。 やはり誰も住んでいないようだ。人の気配が全くせず、緊張感に恐怖を上乗せする。 非常階段に吹き込む風が皮膚に刺さるようだ。 「8」と書かれた扉を本田がゆっくり回す。隙間から覗いた廊下は、此処だけ物が置いてある。 頷きあい、いざ足を踏み入れる。 目的の部屋の前で、深呼吸をして巣窟へのノブを回した。 小さな錆びた金属音がして本田の手が止まる。汗ばむのを押さえて、慎重に慎重にノブを右に回す。 引っかかりがない。扉は開いている。 下にセキュリティーをつけて気が緩んでいるのか、しかし警戒するに越した事はない。 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと…… ノブを回し、そして重たい扉を開く。 「……で…よな」 「あ………、……だな」 微かに聞こえる話し声は人数にして二人。勝敗は十分にある。 静かに握った拳をぶつけ合い、お互いの無事を願うのは暗黙の了解。 軋む廊下を抜き足で進む。 そして…… 「警察だ!!」 部屋へ突撃してきた本田と東を見て、二人の男が慌てだす。 逃げ場を探そうとドタバタと慌てふためき、唯一の出入口は二人の刑事が塞いでいて、外への逃げ場はベランダしかない。 しかしここは八階。犯人たちのとる行動は一つ…… 「やっちまえ!」 手近の椅子や、本を本田と東に投げつけてきた。 出入口は塞いだまま、二人は物を避けながら犯人に突撃する。 「おら! 逮捕だ逮捕!」 何年バディを組んでも背筋が凍る本田のドスの効いた低い声。     
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