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二階の通路に到着した二人。本田が赤い紐を回収し、外から確認していた八階へ向かう。
やはり誰も住んでいないようだ。人の気配が全くせず、緊張感に恐怖を上乗せする。
非常階段に吹き込む風が皮膚に刺さるようだ。
「8」と書かれた扉を本田がゆっくり回す。隙間から覗いた廊下は、此処だけ物が置いてある。
頷きあい、いざ足を踏み入れる。
目的の部屋の前で、深呼吸をして巣窟へのノブを回した。
小さな錆びた金属音がして本田の手が止まる。汗ばむのを押さえて、慎重に慎重にノブを右に回す。
引っかかりがない。扉は開いている。
下にセキュリティーをつけて気が緩んでいるのか、しかし警戒するに越した事はない。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと……
ノブを回し、そして重たい扉を開く。
「……で…よな」
「あ………、……だな」
微かに聞こえる話し声は人数にして二人。勝敗は十分にある。
静かに握った拳をぶつけ合い、お互いの無事を願うのは暗黙の了解。
軋む廊下を抜き足で進む。
そして……
「警察だ!!」
部屋へ突撃してきた本田と東を見て、二人の男が慌てだす。
逃げ場を探そうとドタバタと慌てふためき、唯一の出入口は二人の刑事が塞いでいて、外への逃げ場はベランダしかない。
しかしここは八階。犯人たちのとる行動は一つ……
「やっちまえ!」
手近の椅子や、本を本田と東に投げつけてきた。
出入口は塞いだまま、二人は物を避けながら犯人に突撃する。
「おら! 逮捕だ逮捕!」
何年バディを組んでも背筋が凍る本田のドスの効いた低い声。
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