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定年近いとは思えない逞しい身体が犯人の一人に体当たりし技をかけた。
「っっしゃあああ!」
吹っ飛んだ犯人がバランスを崩し倒れたところにガチャンと逮捕の音がする。
「東、そっちは任せたぞ!」
「はい!」
先輩に遅れは取れないと、東ももう一人の犯人に突進した。
しかしその直前で東の足が止まる。
追い込まれたとは思えない微笑みを浮かべた犯人が鉄パイプを取り出した。
ブン!と風を切る音に神経を集中させ、狭い部屋の中、東は必死に不規則な動きをとらえる。
──ベコッ
東がしゃがんで避けた鉄パイプが壁をへこます。
(ここだ!!)
しゃがんだ体勢から一気に犯人の懐に潜り込み、鉄パイプを持つ右手首を捻った。
「くそっ!」
カランカランと派手な音を鳴らし鉄パイプが床に転がる。そして東が犯人の足を引っかけようと片足立ちになった時……
「馬鹿めっ!」
犯人の左手が東の腰を掴む。
「東! 盗られるぞ、避けろ!!」
腰をくねらせたが遅かった。警察を知り尽くした犯人は東の腰から拳銃を抜き取った。
そして背後から東の首に腕を回し締め付ける。
「ぐっ!!」
犯人の強じんな腕が喉に食い込む。
力が抜け、膝をつきそうなギリギリのところで踏ん張るが、意識は遠退いていく。
本田の大声が東をこちらに戻そうと轟く。
「しっかりしろ! くっそ、聞こえてねーか。おい、そいつを離せ!」
相手を変えるが、犯人がいう事を聞くわけがない。
「離すのはそっちだぜ、おっさん!」
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