File2真っ赤な絆は男の勲章

3/14
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
(あれって……) 東は貧血に似た立ちくらみを起こしその場に座り込みそうになった。背筋が凍る中、何度見ても社会の窓から見える赤い布にはさらに臙脂色の布がチラ見えしていた。 讃美歌の甲高い声が鼓膜を突き抜ける様に、あの事件の赤い紐が脳内を突き抜ける。 マンションに侵入し、東と犯人を救ったあの赤い布。裂けた箇所は不器用な東が臙脂色の布をあてがい修繕した。あれこそは──本田の勝負褌だった。  本田が褌を愛用している事は知っている。 共同浴場で知ったのだ。普段は白、しかし特別な日は赤だと教えてくれた。 彼の言う特別な日を東は勝手に「奥さんと仲良くする日」だと思い込んでいた。 女性の勝負下着と同等だと思っていた。しかし、本田の勝負下着とはそんな不純なものではなく、本当に男として勝負すべき日だったのだ。 アジトへの突撃、そして今日の様な祝い事の日、気合入れの為に着用していた赤い褌がまさかあの赤い紐だと知り、東は失礼だが今すぐ手を洗いたくなった。 「……」 赤い紐を必死に掴んだ両手を見つめる。 そして固く握り直す。 ──今は、あの悪魔をどうにかしないといけない。 東つかさは真っ赤な悪魔の逮捕に刑事魂を再燃させた。  まず、状況調査だ。 ここはチャペル。入口には本田一家。 だが、誰も本田には意識が向いていない。今現在のメインは知美と奈々のベールダウンの儀式だ。参列客の頭はそちらへ向いている。  そして、考察。 この後、ベールダウンの儀式を終え、再び本田と奈々が腕を組みゆっくりとヴァージンロードを歩いてくる。問題はここだ。ここで確実に本田の赤い悪魔に気が付くものはいる。 結婚式に慣れている者や、そもそも社交辞令で参加している者は花嫁などに興味はない。 首をキョロキョロ動かし、あの赤に気が付くかもしれない。 真っ黒なモーニングに不釣り合いな赤、いくらヴァージンロードが赤いとはいえ、奈々の純白のドレスと並べば、いろんな意味で紅一点、参列客の視線を独り占めだ。  つまり、今回のミッションの最善策は……。 ──二人が歩き出す前にあの社会の窓を閉める事だ。 しかし、どうしたものか。 東が祭壇から降りてヴァージンロードを駆け抜け閉めに行くなどもってのほか。 西部劇の様にロープで……などと実質不可能な案しか浮かんでこない。 東は一人焦りに焦った。 そして本田は、それに気が付いていた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!