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「美代子から知らせがあっただろ」
玄関で行き場をなくしている僕に老人が言った。
美代子というのは、母の名前である。
「え?」
「電話があっただろ。儂は今日の朝、死んだ」
「は?」
「最後に可愛い孫の顔を一目見たくてな。地獄の閻魔に土下座をして、お前のところに来たんだよ」
「あ?」
「わからんやつだな。だから、おじいちゃんがお前のところに幽霊になって会いに来たの!わかったら茶でも出さんか。どういう教育を受けてきたんだ」
いくら僕が品行方正、お人好しの好青年と言われていようとも、こんなにぶっ飛んだ話を受け入れられるほど真っ直ぐな心は持ち合わせてはいない。
警察に連絡をと考えたが、教養高い僕は、こういうある種非常事態時において冷静さを保つことが大事だということを知っている。目の前の老人を刺激するのは得策ではない。
この異常な状況を以下にして打破すべきか。
僕は覚悟を決め、老人の向かいに座った。
とりあえず、僕の祖父の幽霊を名乗るこの老人に話を合わせことにする。
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