第2章 豚骨

3/3
前へ
/45ページ
次へ
 その帰り、僕はレンタルビデオ店に寄った。ホラー作品の並ぶ棚で「十三日の金曜日」を探した。すぐに見つかった。シリーズ作品が何本も並んでいる。少し迷ってから「ジェイソンの命日」というサブタイトルが付けられた作品を借りた。  アパートに帰り、借りてきたDVDをノートパソコンにセットする。雰囲気を出すために部屋の電気も消した。  ジェイソンは出だしのほうでいきなり死んだ。森の中で女を追いかけていたところに一斉射撃が行われる。迫撃砲も打ち込まれてバラバラになって吹き飛んだ。  そのバラバラの死体は警察の施設に運ばれて検視にかけられる。このとき、検視官はなぜかジェイソンの心臓をまるでレバ刺しのように美味そうに食べてしまう。気持ち悪いがなかなか引きつけられる。が、この作品で面白いといえるのはそのシーンくらいだった。  その後、ジェイソンの魂は検視官に乗り移って次々と人を殺していく。しかし、他人の体では長くもたないので完全なる復活を遂げるため肉親の赤ん坊の体を狙い……。  ふわっとあくびが漏れた。  ホッケーマスクを被ったジェイソンがもっと活躍すると思っていたのだが、そうではないことに肩透かしを食らったよ うな気分だった。次第に眠くなってきた。それでも貴子との共通の話題作りのために頑張って見続けようとするのだが、最終的には睡魔に負けた。  目が覚めたときにはクレジットロールが流れていた。口からは涎が垂れている。巻き戻して見直す気にはなれなかった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加