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「コホン、まぁ、無事例年通り発行できただけでもよかったよ
去年の秋の部活発表までには間に合わなかったけどさ」
「そうだね。でもせっかくなら間に合わせたかったけどね…」
そう、部誌の編集担当者だった卯月はははは、とちょっと浮かない顔をして笑う。
そもそも部誌は、生物部では毎年、部活発表祭という文化祭と一緒に行われるイベントに向けて発行するものだ。
大体、金曜日に身内向けの文化祭があり、その次の日、土曜に部活発表があり、日曜にまた文化祭…そんな感じの日程だ。入学当初はこんな訳の分からないスケジュール、と思っていたが数年経った今はもうこれが当たり前だと思っている。
そこで、研究したことをタブレット端末や、模造紙などを使いつつ口頭で発表したり、実験内容を簡単に体験してもらう。
部誌は発表祭の際に、内容をもっとよく知りたいお客様へ渡したり、発表祭の前に自分たちがお互いの実験について把握するという重要な役割を持つ冊子だ。
自分達の代では数代前から使わせていただいている印刷所でアクシデントがあったらしく、そこで印刷できなかった上、各々が研究に没頭しすぎていたりしたせいで、次の候補となる印刷所を見つけることが出来ずにいた。
そのため急遽学校で印刷し、簡易的な冊子を発表祭に1部、閲覧用で置く、とそれだけになってしまったのだ。
それを今回流石に部員には配ろうとのことで、卯月が再編集し、部員の数だけではあるが、改めて冊子にしてくれた。
そこまでしてくれた卯月には本当に感謝しかない。
やっと冊子の形に出来た部誌を今日、とりあえず後輩と顧問には配ろうと、そして一人で行くのもなんだからーと思い三村を誘ったそうだ。
三村が俺のことを誘うのはもちろん想定済みだったらしく、3人で一緒に部活に配りに行けるのが嬉しい、と言っていた。
「まぁまぁ、過去を悔やんでもしょうがないよね!形に出来ただけでも嬉しいし、ほぼすべての作業をやってくれた卯月にはほんっとうに感謝しかないから!ありがとさまっ!」
そう三村が言うと、卯月は少し驚いたような表情をした後、嬉しそうに目を細め、ありがとう、と言った。
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