残酷兎と優しい猫

1/6
前へ
/6ページ
次へ

残酷兎と優しい猫

 あるところに、一匹の猫がいた。  また、あるところに、一羽の兎がいた。  猫は賢く冷静で、優しい子。  兎は好奇心の強い、いたずらっ子。  それだけならまだしも、兎には大きな欠点があった。  それは、とても残酷なこと。  兎はとても残酷で、自分のためなら兄妹さえも、簡単に傷つけてしまう。  ある時、ついにその兎は村から追い出されてしまった。  兎は一人村を出ていった。  それを見送るものは、誰もいなかった。  けれど兎は、それを気にしたそぶりもなく、「自由だ!! 自由だ!!」そう言って、楽しそうに走ったり、飛んだり、踊ったりしていた。  兎は、暗くなるまで走った。  とにかく走って、走った。  暗くなってからようやく、兎は寝床を探し始めた。  兎は、キョロキョロと辺りを見回し、大きな樫の木を見つけた。  それを見つけた兎は、一目散にそこに走っていった。  そこに着くと、一匹の猫が眠っていた。  兎は、その隣に座り、眠った。 「君、一体誰?」  その言葉で、兎は起きた。  声をした方を見ると、黒い毛並みと金色の目の猫がいた。 「僕は、兎のグレイ。よろしく」 「そう。私は猫のブラック。よろしく」  グレイは元気よく言い、ブラックはどこか気怠げにそうに言った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加