きらきら、宝石箱のような

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きらきら、宝石箱のような

「はい、弥生。今月のお小遣い」  月初め、学校から帰ってすぐ。一番大きな硬貨が手のひらに落とされる。一月に一度しか味わえない感覚を確かめるように、弥生は冷たい硬貨をぎゅっと握りしめる。 「大切に使いなさい」 「うん!」    弾んだ声で返事をする弥生に、母が微笑む。お小遣いの行き先を知っているからだ。今月は、新しく出たキャラクターの描かれた自由帳を買うのだ。そう心に決めて、家を出る。  息を切らし、たどり着いたのは近所の駄菓子屋。あめやチョコレート、みんなが大好きなアイドルのブロマイドくじ。それと、よくわからない味のするドリンク。弥生の好きなものが私を買ってと誘惑してくる。それらに後ろ髪を引かれながら、弥生はある場所に向かう。  店舗の奥にある、文房具が並んだスペース。目当てのノートを見つけるよりも先に、新発売!のポップで飾られたマーカーペンを見つけてしまった。  かわいい!     
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