きらきら、宝石箱のような

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 会議が終わったのか。弥生に声がかけられた。会議が終わったのだと、同僚達は、ほっと胸をなでおろした。なぜなら、祈りを捧げすぎて、弥生がおかしな念仏を唱え始めていたからだ。 「はいっ!」 「企画通ったぞー」  課長のその一言に、フロア内が湧いた。おめでとう、と弥生に声がかけられる。しかし、当の本人の反応はない。 「最上先輩?」  後輩の原西真理が、弥生の前で手を振る。ぽかんと口を開け、弥生は信じられないと言ったと面持ちで立ち尽くしていた。 「企画通ったぞ? これからいそがしくなるが、頑張れよ」  課長が弥生の肩を叩く。ぽん、と小気味よい音で、弥生は我に帰った。 「はい! がんばります!」  嬉しさを隠そうとせず、弥生は花が綻ぶように笑った。喜びを実感してきた弥生の頬に朱が刺す。その様子を、フロア内の誰もが、好ましく思っていた。  大好きな文房具。  自分が夢見る文房具を形にすべく、弥生はデスクに向かう。そして、提出した資料を元に、再度企画を練りなおすことにした。
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