みどり文具のみなさま

1/3
1025人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ

みどり文具のみなさま

「シリーズ名は、『ecrin』。宝石箱という意味です。キラキラと輝く憧れや文房具を持った時に感じるワクワク感。それを受け止める意味を込めました。今回の売上が良ければ、シリーズ化したいと思っています」  プロジェクターから表示された名前を、弥生がポインターで一文字一文字なぞっていく。今日は、弥生主体で始まった新規文房具開発の第一次プレゼンテーションだ。商品名と、開発商品の提案だ。 「第一弾は、ボールペンです。ターゲットは女性。年齢層は、子育て世代」 「子育て世代?」  話の途中だったが、常務が口を挟んできた。常務と聞いて、疑問に思うこともあるかもしれない。弥生の働くみどり文具は、ほかの大手文具メーカーのような大企業ではない。地元に密着した、中小企業。そう言った方が正しい。そのため、商品開発の際には、平社員から社長まで。全ての上役が会議に出席することになっていた。 「はい。先程説明しましたように、ボールペン自体の性能は、既存のものと変わりません。私が今回突出させたいものは、デザインです」      
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!