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「お疲れ様でした!」
「あ、まりちゃん……」
「どうしました? 顔色が悪いですよ?」
企画会議が終わり、弥生がデスクに戻る。すると、隣の席で後輩の真理がすぐにコーヒーをいれてくれた。感謝の言葉を述べ、弥生は真理の持ってきたコーヒーを受け取る。鼻の中を刺すような煮詰まった香りがしたが、気にせず口に含む。
「うーん……予算の痛いところを突かれちゃって」
「あちゃー」
「分かってはいたことなんだけどね」
叩かれることは想定内だった。しかし、実際に目の当たりにすると、落ち込んでしまう。少し考えをまとめるようにと言われる。もう一度資料を見直して改善できる面を探し、お気に入りのマーカーペンで印をつけていく。そんなことをしていたらあっという間に退社時刻になっていた。検討事案をタイピングし、印刷する。そして、確認をしてもらうため、課長のデスクにメモとともに置く。
そして、少し慌ただしく帰宅準備を始めた。
「あれ? 帰るんですか?」
「そう。今日はちょっとね」
毎週火曜日、十八時から。この三年間欠かすことのない約束が、弥生を待っていた。
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