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あさひはじめというおとこ
「あっ! 旭さん! シャンプーっすか? 俺、やりますよ」
弥生がシャンプー台に腰掛けた時だった。誰もいないと思っていた奥のスタッフルームの扉が開いた。大きな声に、弥生はびくりと体を強ばらせた。弥生と同じ位の年齢の男のスタッフが顔を出し、シャンプー台に近寄ってきた。
「今日雑誌の取材があって疲れたんじゃないスか? 遠慮しないでください!」
「小林」
シャンプー台に腰掛ける弥生が二人を見上げる。そんな中、コバと呼ばれた男と一瞬目が合う。その瞬間、男が弥生に視線を合わせるように腰をかがめた。
「うわ、髪めっちゃキレー!」
「……」
男の顔が目の前に寄せられる。呼吸をするとお互いの吐息が混ざり合いそうな程近い。パーソナルスペースにいきなり入り込まれ、弥生はたじろいだ。後に下がりたくても、下がる場所もない。
「しかもめっちゃ可愛い! ほら、アレっすね……アレににてる! ほら、小鹿のアニメ! ねっ! ちょっとつり目で目がくりくりしているところとか!」
「あ、あの」
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