出会い

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出会い

 弥生と旭の出会いは三年前。弥生が新入社員として働き始めて五ヶ月が経った頃だった。  絶対に上手くいくと思いますよぉ~と、語尾を伸ばして話すチャラい美容師を信じた自分を殴り飛ばしてやりたい。  新規オープンの美容室に行ってから三日後。弥生は早くも後悔していた。  生まれつき厄介なくせ毛を弥生は持っていた。基本はストレート。しかし、毛先に行くにつれ、何故かアルファベットの「J」の字を描いてしまう。どこぞのドジっ子のような髪に、弥生はいつも苦労させられていた。それだけならまだしも、つむじが二つあるせいで前髪がぱっくりと割れてしまう。センターわけなど今どきバンダナオタクでもしない。  纏まらない髪の毛をどうにかするべく美容室を渡り歩いて早十数年。たどり着いたのは先日オープンしたばかりの美容室。エグゼクティブスタイリスト(指名料プラス二千円)にカットしてもらった。  後ろ髪を前に持ってきて重みを出した前髪だったが、やはりセンター分けになっている。コッテコテに当てられたくるくるパーマは、朝の始業時間に間に合わないほどの時間を必要とした。決して器用でない弥生にとって、地獄のような日々だった。     
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