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「落ち着いていますねぇ」
「ほんとだね」
「あ、せんぱい。新しい髪型もめっちゃ似合ってます」
「でしょ? 一さんがしてくれたんだ。みんな褒めてくれるの」
真理の持ってきてくれたコーヒーを口にし、互いの近況報告をする。熱いコーヒーがおいしい季節になってくると同時に、弥生達の仕事にもゆとりができた。少しでもぼんやりしてしまうと、思い浮かぶのは一人の人。
繁栄期を終え、比較的余裕のある弥生と違い一はジュエリーデザインの仕事も入ったせいかあちこち忙しそうに飛び回っていた。
「……あれは弥生の為だけに作ったはずなのに」
あまりの忙しさに、一がベッドの中でポツリと呟いたことを思い出す。昔からの知り合いの伝で弥生のためだけに作ったアクセサリーの予定だったが、それがどうやら経営者の目に入ってしまったらしい。ズルズルと断る暇もなく話だけが進んでしまい、いつのまにか……と、一が嘆いていた。
「なんだ、私はてっきり売上アップを狙ってあの時つけたのかと」
「……俺がそんな狡いことをする男にみえるのか?」
「まさか。でも一瞬疑っちゃいました」
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