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楽しみにしてるね、と健太からメールが来て、その日の会話は終わった。
康子はひよこのスタンプを探したが、なかなか見つからない。生前のあかりを思い出しながら、あちこちタップして、ようやくひよこのスタンプを見つけた。「バイバイ」と吹き出しが描かれ、愛らしく手を振っているスタンプ。それを彼へ送ると、しばらくして既読と表示される。胸を撫で下ろすとともに、スマホを持って、あかりの部屋へと駆け込んだのだった。スマホを机の上に置くと、康子は勉強机の引き出しを開けていく
「ごめんね、こんなことして。ごめんね」
しきりにそう呟きながら。せめて描きかけのマンガでもあれば、と願ったが、見つからない。それもそのはずである。あかりが生前、創作活動に打ち込んでいたと分かり、棺へ入れたのだ。
康子は深く溜息をつくと、言った。
「やっぱりない、か……」
物音を聞きつけ誠一が顔を覗かせた。怪訝な顔である。
「何してるんだ?」
彼の声を聞いて康子は誠一に駆け寄った。そして哀願の眼差しで彼へ助けを求める。言わんこっちゃないと一蹴され立ち去っていく、と康子は思っていた。しかし誠一は彼女へと駆け寄ると、きっぱりとこう言った。
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