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「打ち明けよう」
「嫌よ!」
康子は思わず、そう叫んで首を振って続けた。
「〈あの子〉を助けたい」
「あかりのメル友か?」
「ええ、そうよ。健太くん以外に誰がいるっていうの!?」
そうか、と誠一は呟くと哀しい目で言った。
「ともかくこれ以上、嘘は続けちゃダメだ」
「どうして!?」
康子は執拗に食い下がる。詰め寄ってさらに続けた。
「優しい嘘ならいいじゃない!」
「いや、ダメだ。このまま続けたら、あかりになりすましていることが分かる。そうすれば相手の子だって余計に傷くだろ」
いずれは真実を告げなければならないと、康子も分かっていた。しかしせめて健太が高校を卒業するまでは、と思っていたのである。
康子は黙って顔を伏せていると、誠一が言った。
「いや、お前のためだ、というべきかもしれないな」
「え?」
康子はその一言で思わず顔を上げる。誠一は涙ぐんでいたが、それを彼女に悟られまいとあかりの部屋を見回した。持ち主を喪った、がらんとした部屋。
「このままだとお前は壊れる。悲しみに溺れてな。それだけは避けたい。俺のためでも、ましてやあかりのためでもない。お前自身のために」
「私自身の、ため?」
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