時効

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僕の国では時効がほぼ廃止された。時効はスポンサーが付いた場合に成立する。スポンサーから支払われたお金は懸賞金として公示される。一般人は逃亡者を見つけるとお金が貰える。そして逃亡者は時効までの時間を逃げ切れば晴れて無罪になるのだ。 最初の頃は時効のドキュメンタリーは大人気だった。しかし、懸賞金の額を上げると時効は短くなり、懸賞金が少ないとみんなは真剣に探さなかった。次第に番組の視聴率は下がっていった。 ところが久しぶりに高額の懸賞金が発表されて人々は大いに盛り上がった。 懸賞金5億ドル 誰もが血眼になって探した。しかし時効はあと1時間で成立する。番組は特番を組んで大々的に放送していた。僕も番組を固唾をのんで見守っている。なにしろ自分で懸賞金をかけて時効を発生させたのだ。 「さてそろそろ行くか…」 僕はテレビを消してテレビ局に向かった。時効が成立して1時間以内にテレビ局に現れれば懸賞金の一部を貰うことが出来る。実際、その制度のおかげでテレビ局周辺で時効寸前に捕まった者が多い。 僕がテレビ局の公開スタジオに着いた時は時効までのカウントダウンがちょうど終わるところだった。時効成立後に司会者は懸命に逃亡者に出てくるように呼びかけている。その方が番組が盛り上がるからだ。僕は人ごみをかき分けて司会者に近寄っていく。その時、ひとりの男が司会者のそばに出てきた。その男を見た途端に群集は大いに盛り上がった。今回の逃亡者だ。 僕は懐から拳銃を出してその男を撃ち抜いた。 「娘の仇だ…」 呆然とする群集を掻き分けて僕はその場を逃走した。そしてすぐに自分のスポンサーになる。 僕の時効成立まであと3ヵ月…
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