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今迄脈打っていたそれを飲み込み、溜息をつく。
私は手に付いた赤を綺麗に舐めとった。
服についたそれはもう既に黒く変色している。 ああ、勿体無い。
せんせ、ともう動かない肉に話しかけてみる。当然返答はない。
先生は歪んだ瞳を持っていた。先生は私が、砂糖と少しのスパイスと、綺麗な何かで出来ていると最期まで信じていたのだろう。
馬鹿だな。私はそんなに、愛らしい生き物じゃない。 そんな物で出来た生き物なんて、この世界には居ないって言うのに。
私は怪物。愛を喰らうばけもの。私を愛したにんげんの肉は、何よりも甘くて美味しい味がする。
丁度・・・砂糖菓子のように!
つるりと歪んだ瞳を飲み込み、埃を払って立ちあがった。
ふと、違和感に気付く。
先生が、プラスチックと壊れた眼鏡と古びたロザリオで出来ている。
私を見て悲鳴をあげた彼女は、パンケーキとプリクラと陳腐な恋愛小説で出来ていた。
-fin-
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