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洗面所で顔を洗い終わり、リビングに行くと、スーツ姿の眼鏡をかけた柔和な雰囲気の男が新聞を眺めていた。
俺が来たことを察したのだろう、父さん――真九呑地 千治――は新聞を畳み「おはよう」と笑みを浮かべる。
「おはよう」と返し、俺も向かいへと座る。
ハムエッグにサラダ、そしてトーストが目の前のちゃぶ台に置かれていた。
俺が座ってから少し遅れて、台所から現れた母さんも父さんの隣に座る。
「皆揃ったし食べようか」父さんはそう言い「頂きます」と呟く。
それに倣うように俺と母さんが言い、手を合わせる。
……正直食欲はあまり無かったが、とりあえずサラダを口には運ぶ。
口の中で咀嚼するが、味がしない。
(寝不足の時の朝食ってなんでこう……)
等と思っていると母さんから見られていることに気がつく。
何だろうと思い見返すと、「食べられないって顔してるね」
ずばり事実を言い当てられ、思わず驚く。
そんな俺の様子を見て母さんはため息をついた。
「……そんなことはないよ? 」俺は少し強引にハムエッグの切れ端を喉に押し込んだ。
「……あんな時間に食べるから朝食べられないのよ。まさか残すなんて言わないわよね? 」
(それ俺が食べたわけじゃないんです……)
それは勿論と言いかけたその時、「まあまあ母さん」とそれまで静かに食べていた父さんが口を挟む。
「俺も若い頃は良く食べてたよ、夜食。凄く美味しく感じるんだよな。……でも朝食を残すのはいただけないな」メガネをくいっとあげ、此方を見る。
なんとも居心地の悪さを感じて、「た、食べるって! 」と半ばかきこむようにサラダを口に放り、トーストをかじる。
そんな俺の様子を、微笑みながら見る両親。
この二人には敵わないな、と思いながらサラダを口に運んだ。
「そろそろ出ようか」千治は朝食を食べ終わった刃へと話しかける。
「あぁ、うん」と腰をあげ立ち上がる。
そのまま玄関まで二人で歩き、刃は靴を履く寸前でピタリと止まる。
「どうした? 」
「いや、ちょっと忘れ物してたから取ってくる」
パタパタと階段を上がり、刃は二階の自室へと向かう。
自室の机の上にあるノートとペンをとり、さらさらと注意事項のような事を書く。
そうして刃はそこだけ破り、木葉の前に置き、肩を揺する。
「……ん? 」
「今から学校だからとりあえず紙見て」
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