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「とりあえず母さんが出ていく10時くらいまで、この部屋でじっとしといてくれたら後は好きにしていいから」
木葉は目元を擦りながら起き上がり、「分かったー」と欠伸をする。
それだけの動作だが、白い羽や白い髪、そして男の10人中10人が誉めるであろう容姿のおかげで、長い眠りから目を覚ました天使のように見えた。
刃は暫しそれに見惚れていたが、慌てたように頭を振り「じ、じゃあとりあえず行ってくる」とドアノブを捻る。
「行ってらっしゃい」
その声を聴きながら刃は階段を降りていった。
「もう忘れ物はないかい? 」
「あぁ、大丈夫。父さんこそ無いの? 」
「バッチリだよ」
そうして、玄関の外で待っていた父さんと少しだけ話す。
それが平日の朝の日課だった。
「仕事頑張って」
「あぁ、刃もな」と父さんは俺に手を振る。
そして俺は父さんと別れ、通学路を一人歩く。
ブロック塀に挟まれた、車2台がすれ違うのがやっとな細道――とは言えこの時間に限らず、この道はそんなに走っていない――を通学カバンの持ち手に手を添えながら歩く。
右手に下げている通学カバンは1つだけ低部に魔法の手を潜り込ませて支えている。本来は右手で持っているフリすらいらないのだが、万一見られた場合に目立つのは嫌だった。
俺はT字路を右に曲がる。
すると俺の通う高校、市立広光高校の正門が見えてきた。
その先には4階建ての建物が鎮座している。
そのまま門を進み、引き門辺りに立っている先生に軽く会釈をし下駄箱へと向かう。
靴を履き替えながら、たむろっていた何人かのクラスメイト達と適当に挨拶を交わし階段を上がった。
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